KRAXのオフィス
歩くこと5分。KRAXのオフィスは、カタルーニャ広場から海辺まで続く大通り(ランブラス通り)から、少し入った路地裏にあった。
大きなガラス戸のついたその空間は、オフィスというより、アトリエといったほうがしっくりくる。もしくは大学のクラブハウス。壁にはポスターやフライヤーが貼られ、ベニヤを天板にした机の上にはコンピューターが雑然と10台ほど並べられている。
部屋の隅にはベンチとソファー、DJセットが置いてあり、部屋の奥を抜けると小さな中庭がある。僕が到着したときには、中庭で今回のイベントのスタッフが10人ほど集まってミーティングをしていた。ビールを飲みながら、ローソクを囲んでなんともリラックスした雰囲気である。
ナガレモノとの遭遇
するとそこへ知っている顔が一人現れた。マティアスである。2006年の夏、下北沢でUrban Typhoonというワークショップを一緒にオーガナイズして以来、「情報交換」と称しては下北沢で朝まで飲み明かすことがよくあった。セイブ・ザ・下北沢のサウンド・デモの常連でもある。
初めて会ったとき片言の日本語で「ワタシハナガレモノデス」と自己紹介するので、何が言いたいのだろうと不思議に思ったが、「I’m a nomad」と言いたかったと分かり大笑いしたことがあった。
マティアスはジュネーブ(スイス)出身で、現在は東京を本拠地にし、ここ半年はボゴダ(インド)のスラムで住民自治を支援するNGOを手伝いながら調査をしており、僕が知っている中でもっともフットワークの軽い人物の一人である。
しばらくマティアスとおしゃべりしていると、マリアーノからCity Mine(d)の中心人物であるというトムを紹介された。静かに話す穏やかな印象の人だが、同時に芯の強さも感じさせる人物である。ベルギー出身だというが、流暢に英語とスペイン語を話す。
招待してもらったお礼を言うと、「本当に来てくれるとは思わなかったよ、こちらこそありがとう」との返答。続けて「ところで実はゲストにはホテルを用意するはずだったんだけど、予算が足りなくなってしまって。申し訳ないけどKRAXのオーガナイザーの一人であるジュリアのアパートに泊まってもらってもよいだろうか?マティアスにもそうしてもらえると助かるよ。もしくは安いホテルを紹介してもよいけど・・・」という。
僕は「もちろんそれでかまわない」と答えた。マティアスも快諾。こちらとしては飛行機代を出してもらえただけでも十分だ。
ジュリアのアパート
ジュリアのアパートはKRAXのオフィスから10分ほど歩いたところにあった。
スペインには日本で言う「ワンルーム・アパート」というのは無いそうで、「ファミリータイプ」が主流だそうだ。だから若者たちは4,5人でルームシェアをすることが多い。ジュリアのアパートは5人でシェアしていて、ちょうどいま空いている一部屋をマティアスと僕に提供してくれるというわけだ。
セミダブルベッドに男二人か、と苦笑したが、マティアスにいわせると「インドじゃ、このくらいのベッドなら4人は寝てるし、床よりマシ」。まぁそりゃそうだ。
明後日から始まる4日間のイベントでは、初日にプレゼンテーションをすることになっているので、明日はその準備をしなくてはならない。
今日は疲れたので早く寝ることに決めジュリアに「お休み」を言いに行くと、彼女はこれから出かけるのだという。「海岸の近くに私たちが関わっているスクワット・プレイス(無断占拠空家)があって、今夜遅くに警察が解除に来るかもしれないという情報があったので、これからいくの」という。彼女の仲間たちが数年前、警察の管理下にあった空家をスクワットし、それ以来ずっと警察との緊張関係が続いているのだそうだ。
スクワットについては物の本で読んだりしていたので、実際どんなものかと凄く興味が沸いたが、彼女についていって警察とやりあい「バルセロナ初日で逮捕」というのもなぁと思いとどまった。とりあえず今日は寝て、明日様子を見に行くことにする。

