バルセロナ・レポート3

2007年4月24日(火) 晴れ。

ヨーロッパの若者たちが目指す場所

目覚めるとすでに昼も12時。久しぶりによく寝た気がする。そっと部屋を出てシャワーを浴びる。戻ると、この家に住むメンバー4人が食事をしていた。メニューは、パンにマーマレードとコーヒー、それにイチゴ。

この4人とは初めて会うのだが、一人は大学で建築を学んでいる学生、一人は映画館で働いている若者、一人はフランス人の絵描き、もう一人は何をしているのかよく分からなかったがよくしゃべる女の子で、KRAXの運営にも関わっているということだった。全員20代後半から30代といったところだろうか。

「昨夜ジュリアがスクワット・プレイスに出かけていったみたいけど、その後どうなったか知ってる?」と聞いたが、みんなよく知らない様子。「でもこういうことってよくあるから、大丈夫よ」とよくしゃべる女の子。「へー、あなたスクワットに興味あるの? 場所教えてあげるから、見にいってきたら?」というので、後で様子を見に行くことに。


barcelona_07.jpgキッチン脇のテーブル。「誰かが食べ始めると、他のみんなも集まってくる」


絵描きのアンは、パリからバルセロナに来て3年になるが、居心地がいいのでずっと住むつもりだそうだ。彼女によると、バルセロナのほうが物価が安く、気候も温暖で、なにしろ「気楽」なので、近年パリやロンドンからバルセロナに移り住む若者が増えているらしい。「パリにいてもいい仕事がなかなか見つからないし、ここなら必要があればすぐに実家に帰れる。最近はヨーロッパの主要都市間を50ユーロ(約8000円)で結ぶ格安航空があって、バルセロナとパリやロンドンを行き来しながら生活している友人が何人もいるわ」とのこと。日本でも少し前、タイやインド、マレー、グアムなどに住みながら、たまに日本に戻ってくるというライフスタイルの若者のことが話題になったが、バルセロナは社会のメインストリームとは違う生き方を求めるヨーロッパの若者たちが目指す場所の一つであるようだ。


何が「日本の特殊事情」か?

午後は明日のプレゼンテーションに向けての準備。今回のプレゼンテーションでは、都市再開発が下北沢という街をどう変えようとしているのか、それに対し運動側はどんなアプローチをしており、どんな困難に直面しているのかということを報告する予定だ。関連の写真や映像をたくさん持参した。

しかし、そもそも下北沢の都市再開発問題を外国人に理解してもらうためには、日本の特殊事情を説明する必要があると思うのだが、何が日本の「特殊事情」なのか、日本人の僕にはいまいちよく分からない。たとえば莫大な国家予算をコンクリート産業につぎ込む「土建国家」という国のあり方は、どこまで日本の特殊事情なのだろうか。他の国のプレゼンテーションを聞きながら、逆に日本の「特殊事情」が見えてくればありがたい。


バルセロナのジョニー・デップ

3時間ほど作業をしてだいたい出来上がったので、街に出てみた。この辺りはバルセロナの中心街の「ゴシック地区」と呼ばれるところで、15世紀前後に建設された古い教会や広場があるエリアだ。観光客も多い。

大通りにはピエロや、蝶々、サッカー選手のロナウジーニョ(に扮した男)などが芸を披露しては客からチップを集めている。最近流行りのハリウッド映画「パイレーツオブカリビアン」のジャック船長(ジョニー・デップ)が人気を集めている模様。商売敵が多いため、新ネタの開発競争が盛んなようだ。売れっ子パフォーマーともなれば、その稼ぎで十分生活していけそうである。


barcelona_09.jpgランブラス通りのパフォーマー。


東京では数年前、石原都政のもと路上でパフォーマンスをすることが規制されるようになった。ヘブンアーティスト制度といって、あらかじめ審査をうけて合格したパフォーマーのみが、行政の許可を得て道路や公園などでパフォーマンスができるというものだ。この制度がつくられるとき、「行政がアーティストを審査・評価するのはおかしい」という批判はあったものの、それほど議論は盛り上がることなく制度は作られた。

しかし、本当は「行政がアーティストを審査・評価する」ことの問題以前に、パブリック・スペースにまつわる権限を行政が独占していることこそが問題なのではないだろうか。このことは結構根が深い問題で、「パブリック」をどのようなものとして考えるかということとダイレクトにつながってくるのでまた後でちゃんと考えてみたい。

ちなみにバルセロナのランブラス通りでは、土産物屋の店主に聞いたところ、「別に誰かに許可を取るということはないさ。お互いの縄張りを侵害しなければ特に問題はない。こっちだって客を集めてもらったほうがありがたいから歓迎してる。それに見てて楽しいだろ?」ということだった。